取材・文=佐藤 美咲(アイドルライター/ファン心理マーケター)
2025.10.17
はじめに — あの頃、声がすべてだった。
ねぇ、覚えてる? あの空気の震え。ステージが始まる前、誰もが息を潜めて、照明の“点く音”を待ってた。私はその瞬間を、何度も現場で見てきた。取材者として、そして一人の“推し狂い”として。
15年間、600組以上のアイドルを取材してきたけど、何度思い返しても胸が熱くなる。昭和のファン文化って、ただの応援じゃなかった。命を賭けた「好き」の表現だったんだ。
親衛隊のコール、雑誌の切り抜き、ブロマイドの手触り。あの頃のファンたちは、スマホもSNSもなくても、ちゃんと“繋がって”いた。しかも、熱が濃い。生き様レベルで。
この記事では、取材して泣いたり笑ったりした“あの瞬間”を、あなたに全部話す。今の推し活に通じる“原点”を、まっすぐに。
第1章:親衛隊 — 声で守る、愛の最前線
「俺たちは、声で彼女を守ってたんだ」——この言葉、何度聞いても鳥肌が立つ。親衛隊の元リーダーに取材したとき、涙が出そうになった。だって、その声は“叫び”じゃなくて“盾”だったんだよ。
1980年代、松田聖子や中森明菜のステージでは、コールの統率が完璧だった。誰がどのタイミングで叫ぶのか、すべてが“計算された情熱”。私は当時のコール表を見せてもらったけど、折り目の跡と鉛筆の走りに、命の温度があった。
「ミスが怖いんじゃない。聖子ちゃんが泣くのが怖かった」——元・親衛隊長
この一言で、私は完全に泣いた。応援じゃない、共闘なんだ。ファンが「守るために叫ぶ」。その文化が、今のペンライトの波や、MIXの原点になってる。
取材中、私は親衛隊の古いTシャツを触らせてもらった。薄くなったプリント。でも、それを持つ手が震えるほどの誇りに包まれていた。
第2章:雑誌 — 紙面で繋がった“ファンの国”
昭和の雑誌って、まるでファンの“聖書”だったと思う。『Myojo』、『平凡』、『近代映画』。どれも、ページを開くたびにドキドキして、インクの匂いで恋をしてた。
私は『Myojo』の元編集者に取材したとき、「編集部は恋の郵便局だった」と言われて、思わず笑った。毎月、数千通のファンレターが届き、その中から特集を作ってたんだって。
「ファンの一言で、誌面が変わる。だから私たちも本気で泣いてた。」——元編集者
推しを“見つける”だけじゃなくて、“一緒に作る”。昭和の雑誌はまさにファンとアイドルの共同制作現場だった。切り抜きを手帳に貼って、枕元に置いて、寝る前に「明日も頑張ろう」って思ってた。あの行為、現代の“推し活ノート”と何も変わらない。
第3章:ブロマイド — 手のひらの中の永遠
原宿の駅を降りて、友達と小走りでブロマイド屋へ。ショーウィンドウのガラス越しに並んだ笑顔たちを前に、「どれにする!?」って迷って。あの時間、永遠に閉じ込めたいくらい楽しかった。
ブロマイドは、いわば“紙のアクスタ”。たった1枚100円の写真に、青春の全部を託した。指先で触れるざらざらの質感、わずかに香る現像液。そのリアルが、“好き”を信じさせてくれた。
「写真の角を触るとね、あの子の声が聞こえる気がした」——元女性ファン
取材で見せてもらった未公開ショットのコンタクトシートを前に、私は泣いた。撮影者もファンも、みんな“誰かを信じてる”眼差しなんだ。手のひらに収まる希望。それが、ブロマイド。
第4章:文化の進化 — 昭和の熱が令和を動かす
親衛隊の旗がペンライトに。雑誌の投稿欄がSNSに。ブロマイドがトレカやチェキに。進化してるようで、根っこは全然変わってない。
私が推し活マーケティングを研究していていつも思うのは、昭和のファンって、マーケティング以前に「生き方のプロ」だったということ。自分の愛の表現を、誰にも教わらずに見つけ出してた。
推し活の本質は、「誰かのために泣ける自分でいたい」という欲求。昭和のファンは、それを声と紙と写真で表現してた。つまり、私たちが今ペンライトを振るたびに、昭和の記憶が鼓動してるんだ。
第5章:いま、私たちが継ぐもの
令和の今、ライブでペンライトを振ってる人。SNSで推しを語ってる人。全部、あの時代の延長線上にいる。昭和の親衛隊が築いた“応援の美学”を、私たちは無意識に継いでる。
私が取材してきたファンの多くが言ってた。「あの頃の推し方が、今の自分の生き方を作った」って。推すことで、人生が豊かになる。推すことで、誰かの希望になれる。
推すことは、時代を超えて自分を生かすこと。
そう。昭和のステージの光は、今も私たちの心で生きてる。だから私は、これを書きながら泣いて笑って、また推しに会いたくなる。この文章も、私の“声援”なんだ。
参考・公式リンク
© 2025 Misaki Sato / Idol Writing Studio
ドコデモノート|何気ない日々が、一番特別。
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